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5%賃上げしてもスタッフは辞める?クリニックの離職理由と定着のヒント

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「給与を上げれば、スタッフは辞めない。」

多くの院長先生や事務長がそう考えたいところですが、現実はそう単純ではありません。実際にベースアップを実施したにもかかわらず、数か月後に退職者が出てしまったという話は決して珍しくありません。

「昨年賃上げをしたのに退職者が出た」

「近隣クリニックより給与は高いはずなのに定着しない」

そんな悩みを抱えている院長先生や事務長も多いのではないでしょうか。

クリニック経営において、スタッフの採用と定着は永遠の課題です。特に昨今は物価高騰や深刻な人材不足を背景に、ベースアップ(賃上げ)を実施する医療機関も増えています。しかし、「給与を上げること」と「長く働き続けてもらうこと」は必ずしもイコールではありません。

今回は、株式会社ワークポートが実施した調査データをもとに、クリニックスタッフが離職を考える本当の理由と、定着率向上のヒントについて考えてみたいと思います。

1. 給与アップだけでは離職は防げない?

転職・就職支援サービスを展開する株式会社ワークポートの調査によると、5%以上の賃上げが約束された場合でも、9割以上の人が転職活動を継続すると回答しています。一方で、「転職活動を完全にやめる」と回答した人はわずか4.1%でした。

5%の賃上げといえば、基本給20万円であれば月額1万円の増加です。クリニック経営においても決して小さな投資ではありません。それにもかかわらず、多くの人が転職を考え続けるという事実は、「給与だけでは人は定着しない」ことを示しています。

もちろん給与は重要です。しかし、スタッフが職場に求めているものは給与だけではありません。医療業界特有の事情はあるものの、「成長したい」「良好な人間関係の中で働きたい」「プライベートも大切にしたい」という働く人の本質は、業界を問わず共通しているのではないでしょうか。

2. スタッフが辞めたいと感じる理由

同調査で挙げられた主な離職理由は次の3つでした。

  • キャリア成長不足・スキルの停滞(36.8%)

  • 人間関係や職場風土の問題(30.4%)

  • 労働時間や休日への不満(26.7%)

これをクリニックの現場に置き換えて考えてみましょう。

成長できない職場への不安

医療事務、看護師、リハビリ職などの医療従事者は、専門性を高めながらキャリアを形成したいと考えている方が少なくありません。毎日同じ業務の繰り返しで新しい挑戦の機会がなかったり、学びの場が少なかったりすると、「このままここで働いていて大丈夫だろうか」という不安が生まれます。

特に向上心の高いスタッフほど、自身の市場価値や将来のキャリアを意識しているため、成長の実感を得られない環境は離職のきっかけになりやすいのです。

人間関係のストレス

クリニックは少人数で運営されることが多く、毎日同じメンバーと密接に働く環境です。そのため、院長とのコミュニケーション不足や職種間の認識のズレ、スタッフ同士の関係性の悪化などが大きなストレスになります。

実際に退職理由として「給与」と説明されるケースでも、詳しく話を聞いてみると背景には人間関係の問題が隠れていることは少なくありません。「毎朝出勤するのがつらい」と感じるようになれば、離職は時間の問題です。

働き方への不満

残業の常態化や有給休暇の取得しづらさ、人員不足による負担の偏りなども離職に直結します。特に子育て世代やワークライフバランスを重視する世代にとっては、給与以上に「休みたい時に休める」「家庭と仕事を両立できる」という環境づくりが、長期定着には欠かせません。

3. 定着率向上のためにできること

では、クリニックとして何に取り組むべきなのでしょうか。給与改善を土台としながら、次のようなアプローチを進めることが重要です。

取り組み項目 具体的なアクション 期待できる効果
① 評価とキャリアの見える化 定期面談、院内勉強会、外部研修・資格取得の支援 「このクリニックで成長できる」という安心感の醸成
② 心理的安全性の高い職場づくり 1on1面談の実施、クリニックの理念・目標の共有 意見を言い合える環境づくり、組織の一体感向上
③ 業務効率化の推進 WEB予約・問診システム、自動精算機の導入 事務負担の軽減、患者対応への集中によるやりがい向上

評価制度とキャリアパスの見える化

スタッフは自分の努力がどのように評価されるのかを知りたいと考えています。定期的な面談を行い、期待する役割や目標を共有することが大切です。また、資格取得支援などを整備することで、将来へのビジョンが見えやすくなります。

心理的安全性の高い職場づくり

スタッフが安心して意見を言える環境は非常に重要です。定期的な1on1面談やミーティングを実施し、業務上の課題だけでなく将来の希望や悩みを共有できる場を設けましょう。

業務効率化による働きやすい環境づくり

スタッフ不足の中で働きやすさを実現するためには、DX(デジタルトランスフォーメーション)の活用も欠かせません。システムの力を借りて受付や事務作業の負担を軽減することで、スタッフが本来の専門業務に集中でき、やりがいの向上にもつながります。

4. まとめ

賃上げは大切です。しかし、賃上げだけでスタッフの定着が実現するわけではありません。

スタッフが本当に求めているのは、「このクリニックで働き続けることで成長できるか」「安心して働ける環境があるか」という将来への期待と安心感です。これからの時代は、給与だけではなく、成長環境、人間関係、働きやすさを含めた総合的な職場づくりが求められます。

院長先生が診療に集中する一方で、組織の健康状態に目を配り、スタッフが長く活躍できる環境を整えることは事務長の重要な役割の一つです。

まずはスタッフの声に耳を傾けることから始めてみてはいかがでしょうか。その小さな一歩が、選ばれるクリニックづくりにつながるかもしれません。