重要なお知らせ

ご新規のご依頼制限について

現在、連日多くのお問い合わせをいただいております。株式会社ジムチョーでは、「支援品質を維持するため」、ご支援できる医療機関数を限定しております。そのため、現在は新規ご支援の受付を調整しております。ご相談をご希望の医療機関様は、お問い合わせフォームより事前にお問い合わせをお願い致します。受付順に順次ご案内させていただきます。

災害時でもクリニックを止めない! 今見直したいBCPチェックポイント

  • #コラム
  • #
  • #

「地震・雷・火事・親父」――。

これは昔から、人が恐れるべきものの代名詞として語られてきた言葉です。

令和の現代にあてはめるなら、ここには「ゲリラ豪雨」や「個人情報流出」、「ネット炎上」といった新たな脅威も入ってくるのかもしれません。

一方で、時代がどれほど変わろうとも、一番恐ろしいのは先日の熊本を襲ったような「大地震」であるという現実は、今も昔も変わらないのではないでしょうか。

地域の医療インフラであるクリニックにとって、いざという時に診療を止めないための計画をあらかじめ決めておくことは、クリニック経営と地域医療を守るために欠かせません。

先日、あるジャンルで日本国内トップレベルの診療実績を誇るクリニックの院長先生からお話を伺う機会がありました。そこで明かされたのは、熊本地震の直後に院長がとった、まさに「従来のマニュアルにとらわれない驚きの行動」でした。

1. トップレベルの院長が実践した熊本地震での「初動対応」

先日、ある特定の医療分野において日本トップレベルの診療実績と組織力を誇る、関東圏にあるクリニックの院長先生とお話しする貴重な機会をいただきました。

この院長先生は、自院が直接の被災地から離れた関東圏にありながらも、とっさに驚くべき初動対応を起こされていました。

トップレベルのクリニックが即座に実行した2つの初動対応

【第一段階】全スタッフおよび「九州地方にゆかりのある家族」の安否確認

地震発生の報を受け、院長がまず最初に着手したのは自院のスタッフ本人はもちろんのこと、「スタッフのご家族や身内で九州にお住まいの方がいないか」の網羅的な安全確認でした。現場で働く医療従事者自身やその家族が不安・混乱に晒されている状態では、安全で質の高い医療サービスを提供することは不可欠です。人命尊重とスタッフの安心確保こそが、すべての事業継続の第一歩となりました。

【第二段階】医療薬品・資材の「ロジスティクス(供給網)リスク」の点検

家族の安否確認と並行して即座に実施されたのが、自院の診療を支える医療薬品や医療用資材のサプライチェーンチェックでした。「自院で使用している医薬品の中で、九州を経由して配送されているものはないか」「九州国内の工場や物流拠点で生産・保管されている資材が、地震の影響で生産ストップや流通途絶を起こさないか」をリアルタイムで洗い出し、代替ルートの交渉や必要在庫の確保へと迅速に動いたのです。

クリニックは、地域住民にとって最も身近な医療の最前線(フロント)に位置する存在です。万が一の事態が起きた際、そのフロントの診療が止まれば、地域全体の医療不安に直結してしまいます。

自院の物理的な被害がない地域に居ながらも、遠方の災害が及ぼすサプライチェーンの断絶を見越し、即座に手を打ったこの院長の行動には思わずうなりました。「慧眼(けいがん)」とはまさにこういったことを言うのでは、と感じさせられます。

単なる避難訓練を超えて「経営と地域医療を守るBCPの実効性」とは何かを物語る、非常に象徴的な初動対応と言えます。

そもそもBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)とは、大地震などの自然災害や感染症の流行、システム障害などの緊急事態が発生した際に、損害を最小限に抑えつつ、中核となる事業(医療機関においては外来・在宅診療や地域医療の継続)を速やかに再開・継続するための計画のことです。

2. コロナ禍の教訓と「インフラ・物流途絶」への構え

私たちは、数年前の新型コロナウイルス感染症のパンデミックという未知のウイルスと戦った経験から、マスクや防護服、消毒液をはじめ、解熱鎮痛薬や咳止め薬などの日常的な医薬品に至るまで、世界規模・全国規模での極めて深刻な品薄と供給停滞を身をもって経験しました。本来であれば、あの厳しい経験をもっと日頃の備えやクリニックのBCP計画に活かすことができるはずです。

事実、今回の熊本地震においても、発災直後から厚生労働省や製薬企業・卸業者が一体となり、設備被害の把握と医薬品の供給網(サプライチェーン)に支障が出ないよう即座に情報収集と対応に動いています。行政やメーカー側が流通の維持に全力を挙げる一方で、受け手である個々のクリニック側も「どのルートから薬や資材が届いているのか」を把握しておかなければ、緊急時の対応にタイムラグが生じてしまいます。

どれほど診療所の建物が無事であっても、「医療薬品の不達」や大停電による「電源の損失」が発生すれば、医療機関としての機能は即座に停止します。

特に現代のクリニックは、電子カルテ、画像管理システム(PACS)、保冷庫(ワクチンや特定薬品の保管)、Web予約・問診システムなど、あらゆる機能が「電力」に依存しています。大規模災害によって地域全体が停電した場合、非常用電源(ポータブル蓄電池、自家発電設備、V2Hシステム等)の備えがなければ、カルテの閲覧すらできず、保管中のワクチンや薬液が失効してしまう事態に陥ります。

だからこそ平時から、

  • 非常用電源の確保(ポータブル電源や非常用発電機の配備、優先給電ラインの設定)
  • 自院で使用する重要医薬品・資材の製造地および配送ルートの構造把握
  • 特定のメーカーや単一の卸業者に依存しすぎない代替ルート・代替薬の事前検討
  • 非常時における医薬品卸業者や資材メーカーとのダイレクトな連絡体制の整備

といった、「緊急時の電源確保とロジスティクスの双方を踏まえた事前の計画策定」が不可欠なのです。

3. 現場最前線における広域連携と「酷暑・環境リスク」への対応

被災地の現場では、地域の医療機関や薬局が復旧するまでの間、県境を越えた助け合いが行われています。その象徴的な例が、移動式薬局である「モバイルファーマシー(災害時調剤実行車)」の出動です。

被災地では、通常営業を再開した近くの病院や薬局へ患者様をスムーズに案内し、地域全体の医療体制を壊さないような連携プレーが取られています。

さらに、近年の夏場に起きる災害で大きな問題となるのが「猛暑」への対応です。

エアコンが止まるほどの酷暑の中では、避難所での熱中症対策はもちろんですが、実は「院内や移動先に保管しているお薬の品質低下(熱による劣化)」も深刻なリスクになります。

どれほど薬を確保していても、保管場所が高温になってしまえば使用できなくなってしまいます。

災害対策は、単に「薬や設備を確保する」「建物を頑丈にする」ことだけではありません。発災後に襲ってくる「猛暑や寒さ」といった過酷な環境の中で、いかに電源やエアコンを維持し、医療の質を保つかまで考えておくことが、これからのBCPに求められる視点です。

4. 「いざ」という時に現場が即座に動けるBCP計画を

BCPとは、行政や医師会に提出してファイルに保管しておくだけの単なる「形式的な書類」ではありません。非常事態という極限の状況において、院長やスタッフが「誰が、何を、どの順番で確認し、どのように動くか」を判断するための実行マニュアルであり、組織の行動指針です。

貴院のBCPは機能しますか?(見直しチェックポイント)

非常電源の確保と優先順位の明確化: 停電時にどの機器(保冷庫、照明、カルテ端末等)に電源を優先供給するか決め、定期的な稼働テストを行っているか。

薬品・資材の保管温度と環境管理: 猛暑や停電時にも、ワクチンや特定医薬品の保管温度(保冷庫・室温)を維持できる手段が確保されているか。

安否確認の自動化・多重化: 災害時に電話がつながらない事態を想定し、LINE WORKSや専用アプリ等によるスタッフ・家族の安否確認手順が定まっているか。

薬品・資材のサプライチェーン把握: 自院の主要な処方薬や医療機器資材が「どこから、どのように届いているか」のリスクマップを持っているか。

サイバー・情報セキュリティ・手動運用の備え: 電子カルテのオフラインバックアップや、停電・ネットワーク障害時の手書き伝票運用・紙カルテ運用への切替手順が準備されているか。

風評被害・デマ・SNS対策: 非常時の正確な診療情報の広

報手順(HPや公式SNSの更新担当者と運用ルール)が決定されているか。

大災害や新たなパンデミック、突然のブラックアウト(大停電)やサイバー攻撃は、予告なしに訪れます。過去の熊本地震の教訓やコロナ禍での実体験を風化させることなく、「いざ」という時に大切な患者様とスタッフを守り、地域医療を支え続けるための実効性ある計画を、今こそ準備・見直してみませんか?

末筆ではございますが、熊本地震をはじめとする各地の災害で被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い復興と皆様の平安を心よりお祈り申し上げます。