なぜ退職後に不満が表面化するのか? 〜「リベンジ退職」を防ぐクリニックのマネジメント〜
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ある日突然、スタッフから退職を告げられる。
院長先生にとっては、決して珍しいことではないかもしれません。
理由を聞いてみると、「家庭の事情」「体調面」「今後のキャリア」など、さまざまな答えが返ってきます。
ところが、退職したあとになって、次のようなことが起こるケースがあります。
- Googleの口コミに厳しい内容が投稿された
- 転職サイトに職場についてのネガティブな書き込みがあった
- 退職したスタッフと仲の良かった人まで辞めてしまった
最近では、こうした退職後の行動を「リベンジ退職」と呼ぶこともあります。
ただ、ここで大切なのは、「辞めたスタッフが悪い」と考えて終わらせないことです。
なぜなら、退職後に不満が表面化する背景には、在職中に積み重なった「小さな不満」が隠れていることが多いからです。
院長先生からすると、「昨日まで普通に働いていたのに、なぜ?」と感じる退職もあるでしょう。
しかし、スタッフ本人からすると、数か月前から悩んでいたということは珍しくありません。
例えば、ある受付スタッフがいたとします。
仕事が早く、責任感も強いため、自然とその人に仕事が集まっていました。
院長としては、「仕事ができるからお願いしている」というつもりです。
ところが本人は、「頑張っても、どんどん仕事を増やされる」と感じていたかもしれません。
一度、「最近ちょっと忙しくて……」と相談したものの、「今は患者さんが多いから、もう少し頑張って」と言われた。
そのときは納得したように見えても、心の中では、「相談しても変わらないんだ」と思ってしまうことがあります。
そして、その状態が何度も続いた結果、ある日突然、「退職します」となる。
スタッフが不満を口にしていると、「最近、文句が多いな」と感じることもあるでしょう。
しかし、実は不満を言ってくれているうちは、まだ職場に期待しているとも考えられます。
「ここを改善してほしい」「こうしてもらえると働きやすい」という気持ちがあるからです。
一方で、「もう何を言っても仕方ない」と諦めてしまうと、人は不満を口にしなくなります。
院長からすると、「最近は特に何も言わないから、問題ないのだろう」となります。
でも実際には、その逆かもしれません。
これは、スタッフマネジメントを考えるうえで、非常に重要なポイントです。

退職理由は「本当の理由」とは限らない
もう一つ、院長先生が知っておきたいのが、退職理由です。
もちろん、本当にそういう理由の場合もあります。
ただ、その裏側に、次のような気持ちが隠れていることもあります。
- 院長に相談しづらかった
- 人間関係に疲れた
- 仕事量が多かった
- 評価されていないと感じていた
スタッフが退職するときに、すべての本音を話してくれるとは限りません。
だからこそ、退職時だけではなく、普段から本音を話せる関係をつくっておくことが大切なのです。
退職後の口コミを「嫌がらせ」で終わらせない
退職したスタッフから、クリニックに対する厳しい口コミが投稿された。
そんなとき、院長としては、「辞めた腹いせだ」「嫌がらせをされた」と思いたくなるかもしれません。
もちろん、事実と異なる内容や誹謗中傷まで受け入れる必要はありません。
一方で、そこに書かれている内容を冷静に振り返ってみることも大切です。
例えば、「残業が多い」と書かれていたとします。
そのとき、「そんなことを書くなんてひどい」で終わるのではなく、次の点を確認してみます。
- 実際に残業はどのくらい発生していたのか?
- 特定のスタッフに仕事が偏っていなかったか?
- 残業について相談しやすい環境だったか?
すると、退職者への対応だけではなく、今働いているスタッフの職場環境を改善するヒントが見つかるかもしれません。
もちろん、スタッフが長く働いてくれることは、クリニックにとって大きなメリットです。
しかし、どれだけ良い職場をつくっても、退職者をゼロにすることはできません。
結婚や出産、引っ越し、家族の事情、キャリアアップ。人生の変化によって、退職することはあります。
だからこそ目指したいのは、次のようなクリニックなのではないでしょうか。
「ここで働けて良かった」「大変なこともあったけれど、最後まで丁寧に対応してもらえた」。そう思って退職してもらえる職場であれば、退職そのものが大きなトラブルになる可能性も低くなります。

ポイントは、難しい制度を導入することではありません。日々のちょっとしたコミュニケーションです。
1.普段から「最近どう?」と聞く
面談の時間をつくるのも良いでしょう。ただ、形式的な面談だけでは本音は出てきにくいものです。
と、普段から声をかける。そして、スタッフが話してくれたときには、すぐに結論を出そうとせず、まず話を聞く。これだけでも変わります。
2.仕事ができる人に仕事を集めすぎない
「この人に任せれば安心」というスタッフは、どのクリニックにもいると思います。しかし、頼れる人ほど仕事が集中しやすい。
「できるから任せる」が続くと、「頑張る人ほど損をする」という職場になってしまう可能性があります。
仕事量だけでなく、責任や負担も含めて、定期的に見直してみましょう。
3.退職するときこそ、感謝を伝える
退職の申し出を受けたとき、「今辞められたら困る」という気持ちになるのは当然です。しかし、最初から責めてしまうと、スタッフは本音を話せなくなります。
まずは、「今まで頑張ってくれてありがとう」と伝える。
そのうえで、「もしよければ、今後のクリニックのために、改善したほうがいいことがあれば教えてほしい」と聞いてみる。
退職者だからこそ話せることもあります。それを「批判」と捉えるのではなく、クリニックを良くするためのフィードバックとして受け止めてみるのです。
意外と忘れられがちなのが、この視点です。
退職するスタッフに対して、院長がどのように接するか。実は、それを残っているスタッフも見ています。
退職が決まった途端に、「もう辞める人だから」という扱いになったら、残っているスタッフはどう感じるでしょうか。
きっと、「自分が辞めるときも、同じように扱われるのかな」と思うはずです。
逆に、「最後まで丁寧に接してくれる」「今までの働きをきちんと認めてくれる」という姿を見れば、「このクリニックは、人を大切にしてくれる」という安心感につながります。
スタッフの退職は、院長先生にとって大きな負担です。
採用活動をして、新しい人を教育して、現場を立て直さなければならない。できれば避けたいと思うのは当然です。
しかし、退職者が出たときこそ、次のことを考えるチャンスでもあります。
- なぜ辞めたのか?
- もっと早く気づけなかったか?
- 同じ理由で辞める人が出ないためには、何を変えればいいか?
退職後に不満が表面化することを防ぐために必要なのは、特別な対策ではありません。
仕事の負担や評価に偏りがないかを見ること。
そして、退職するときも最後まで一人の人として尊重すること。
この積み重ねが、退職後のトラブルを防ぐ一番の予防策になります。
「辞めないクリニック」を目指すのではなく、「ここで働いて良かったと思ってもらえるクリニック」を目指す。
その結果として、スタッフが長く働きたいと思える職場にもつながっていくのではないでしょうか。
ブレイクスルーラジオでも、今回の「リベンジ退職」をテーマにお話ししています。
通勤時間や作業中の「ながら聴き」でも聞いていただける内容ですので、スタッフマネジメントや組織づくりに悩んでいる院長先生は、ぜひ合わせてご視聴ください。