病院の当直掛け持ち解禁されたニュース
- #お知らせ
厚生労働省は2025年、医師不足の深刻化に対応するため、病院における「宿直医(当直医)」の複数施設掛け持ちを認める方向で規制を緩和する方針を明らかにされました。
これまで病院ごとに宿直医を常時配置することが求められていましたが、今後は一人の医師が複数病院の当直を兼務できるよう制度を見直す予定です。
■背景と目的
この方針の背景には、地方を中心とした医師不足や、夜間の医師確保の困難さがあります。特に慢性期医療や軽度な救急対応にとどまる医療機関では、夜間の急変リスクが低いため、医師の常駐を緩和することで、日中の医師リソースを確保する狙いがあります。
また、ICT(遠隔医療)を活用した対応も視野に入れており、医師の負担軽減と効率的な医療提供体制の構築が進められています。
■現場の反応と懸念
一方で、医療現場からは複数の懸念の声が上がっておりましたので、まとめてみました。
- 急変対応の遅れによる医療の質低下
- 医師一人当たりの責任・業務負担の増大
- 医療訴訟リスクの高まり
- 当直勤務で収入を得ている非常勤医師の働き方や待遇悪化の可能性
慢性期病院や夜間の急変が稀な施設では現実的な選択肢となる一方で、一般病院や急性期病院では、患者の安全確保をどう担保するかが課題となっています。
■今後の流れ
この規制緩和は、政府の「規制改革推進会議」の提案をもとに、厚生労働省が本格検討を開始したばかり。医療現場の実情を踏まえた慎重な議論と制度設計が求められています。
クリニックへの影響について
今回の制度見直しは、主に病院を対象とした規制緩和ですが、クリニック経営にも間接的な影響が考えられます
◉ クリニックにとってのメリット
- 日中の非常勤医師確保がしやすくなる可能性
当直業務から解放された医師が日中の勤務に回ることで、外来診療を行うクリニック側の医師確保にもプラスに働くかもしれません。
- 地域医療連携の強化
病院との当直連携体制が見直される中で、クリニックが地域の健康管理を担う重要性が高まり、診療所と病院の役割分担がより明確になる可能性も。
◉ クリニックにとってのデメリット
- 病診連携における夜間対応の限界
病院の夜間体制が弱体化することで、クリニック側が患者の夜間対応に関する説明や紹介体制の整備を強いられる可能性があります。
- 非常勤医師の待遇競争
当直バイトの機会が減ることで、医師側の収入源が減少。結果として、日中の外来勤務に対して報酬アップを求める動きが起こる可能性もあり、クリニック経営にも影響が出る可能性があります。
医師不足への対応として「当直掛け持ち」が制度的に認められる方向に動いていますが、現場からは安全性や待遇への懸念も多く出ております。
クリニックにとっては、医師の確保面での一部メリットがある一方で、医療提供体制全体の変化を注視し、柔軟な対応が求められる局面と言えるでしょう。