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優秀人材に入職してもらう為の戦略的面接方法

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クリニックにおける採用面接の全体の流れの要約すると以下になります。

・採用する人物の職務要件を明確に決定する
・採用人数、入職時期を決定する
・面接官、面接の流れ、面接を実施するスケジュールを決定する
・募集方法や求人媒体を決定する

「1POINTアドバイス」
求人活動はWEB媒体などを通じて既存スタッフも目にする為、求人内容の作成には細心の注意が必要です。既存のクリニック人事組織における給与のバランスや、各種待遇を再度確認し、適正な求人概要の作成をしましょう。

 

面接の目的

面接の最終的な「目的」には、「採用」か「不採用」の2つしかありません。

面接行為では、「書類選考」と「対話」を必須とし、加えて「適正検査」や「性格診断」を行う場合もあります。候補者の適性やスキルを評価し、採用するかどうかを決定するためのプロセスであり、役職者や院長が選考する事からもその重要制がうかがえます。

面接を通じて、採用する人物の資質、経験、スキル、仕事に対する適合性を深く理解することができます。これは、クリニックの仲間として新しいメンバーを迎え入れる上で、非常に重要な業務の一つと言えます。

 

医療人材の求人の特徴

クリニックでは診療科目が多岐に渡る為、専門職種が多く、経験やキャリアが様々な方で組織構成されるのが特徴です。また新卒採用よりも即戦力となるキャリア採用の求人が多く、職務や雇用形態も多様化しはじめております。

近年では、経験者の人手不足から、異業界からの未経験者の採用を行い育成を行ういわゆるポテンシャル採用もすっかり定着しております。

医療業界は高度な専門知識、技術力、そして患者様へのホスピタリティに深い理解が求められるため、候補者がこれらの要件を満たしているかどうかを評価する必要があります。

 

面接時の心得

面接は一発勝負のLIVEです。超採用難時代に、面接官は「求職者に選んでもらえるクリニック」をプレゼン込の面接を行う事が求められます。決まりきったマニュアル通りの進行では、職場の魅力は伝わらず、優秀な人材は入職してくれません。

一次面接に挑む、候補者心理は2つある事を意識する必要があります。

①「本気で入職したい本命のクリニック」

②「内定だけ獲得してキープするクリニック」

したがって、面接官は採用をしたい適合人材や優秀人材が②の心理状態と感じる際には、「入職したい本命のクリニック」に昇華させる魅力づけをする能力も求められます。

具体的には、面接官はクリニックの広報となり、「プレゼンを行うスタンス」、「対話形式の面接」などがあります。雑談しながら双方のコミュニケーションを図ります。対話の中で候補者の適正や人物像の情報を集めると共に、職場の魅力を落とし込んでいける面接が理想の面接といえるでしょう。

また、面接では大半の方を不採用にする事から、99%以上の不採用者に対してネガティブな対応を行う事もあります。クリニックのイメージダウンとならないように、「圧迫面接」、「否定的言動」を避け、不快感を与えないまま終えます。

「まとめ」
・マニュアルに沿った形式的な面接はNG。話しやすい環境とムードづくり
・質疑応答だけでは、本質を見抜けない。対話形式とアイスブレイクでコミュニケーションを図る
・スタンスは「入職して頂きたい素敵な職場」、候補者もこちらを面接している事を忘れない
・不採用と判断しても極力不快感を与えないまま丁寧な対応で終える

 

様々な面接形式

クリニックにおける採用面接の形式は、「対面面接」、「オンライン面談」の2つの方法が主流となっております。診察に置き換えますと、外来診察時の対面とオンライン診察時のWEB対応に類似しております。

対面面接

初回の一次面接では、原則1対1の形式で、面接官と候補者が直接対話します。さらに最終の選考にて、院長や役職者との対面面接を行うクリニックも多いです。1度の対面面接では多くても面接官3名までが理想です。それ以上に面接官が多い場合には、候補者が萎縮してしまい、不必要な圧迫を与え緊張が解けないまま、面接を進行する為、適正な選考ができない場合があります。

オンライン面接

オンライン面接の最大のメリットは、候補者との面接調整早くスムーズに行える点にあります。優秀な人材の多くは、在職中で多忙な状況で求職活動を行っている傾向が多いです。更に面接場所の用意も容易にでき、続けて多くの候補者と面接も行える為、あらゆるコストの削減に貢献してくれます。注意点としては、候補者が自宅にWi-Fi環境が無い、PCやスマートフォン操作に不慣れな方など、オンライン面接に慣れていない方の際には、事前の配慮が必要となります。

 

選考に求められる役割や資質

面接官には、候補者の選考において、公平かつ正確な評価を行う必要があります。そのためには、どの候補者に対してもニュートラルな気持ちで、落ち着いた態度で接することが重要です。これには、候補者の話を注意深く聞き、理解しようとする姿勢が含まれます。面接官が過度に話しすぎることなく、候補者に発言の機会を十分に与えることが求められます。固定観念に縛られることなく、開かれた心で候補者の意見や経験を受け入れることが大切です。

また、極端な意見や偏見を持たず、冷静かつ客観的な姿勢を保つことが不可欠です。面接官は、権限を不当に行使することなく、公平な評価を心がける必要があります。

「まとめ」
・どの候補者に対しても冷静で公平な選考をする
・書類選考時の先入観や固定観念を強くもたずに面接をする
・候補者の話す内容を聞き入れる体勢ができている(面接官が話しすぎない)
・個人の極端な意見や偏見をもっていない
・権限をみだりに行使しない

 

面接の進め方

下記の5項目の構成で進行するとスムーズで効率良く面接が進行できます。特に最終面接や面接官が複数いる対面面接の進行の際には役立ちます。

基本構成
・アイスブレイク
・自己紹介
・候補者に対する質問
・候補者からの質問
・クロージング

アイスブレイク

面接の始まりには、「※1アイスブレイク」が有効です。これは、緊張を和らげ、リラックスした雰囲気を作るためのものです。簡単な日常的な会話や軽い雑談を交えることで、候補者が落ち着き、自分らしさを表現しやすくさせる為の下地づくりです。

自己紹介

自己紹介の段階では、候補者に自己紹介をしてもらい、その人物の基本情報やバックグラウンドを理解します。この部分では、候補者の経歴、興味、志望動機などに焦点を当てることが一般的です。緊張している候補者は、長く話してしまう方もいる為、1分程度でと付け加えるのも良いでしょう。

候補者に対する質問

この段階では、面接官が候補者に対して質問します。質問は、候補者の職務経験、専門知識、技術スキル、対人スキル、解決策を提供する能力、および職務に対する適合性を評価するために行います。「※2行動面接」の技法などを用いて、過去の具体的な経験や対応を尋ねることが効果的です。質問の順番にはコツがあります。簡単に回答が可能なものから順に思考が必要な回答にあげていく事をお勧めします。

候補者からの質問

面接は双方向のプロセスであるため、候補者にも質問する機会を提供することが重要です。これにより、候補者は組織の文化、職務内容、「※3キャリアパス」などに関して疑問を解消できます。また、候補者がクリニックに対してどれだけ関心を持っているかも把握できます。面接の一番に最後に質問を設定すると、候補者は多くても3つほどまでしか質問しない傾向になります。理想は、面接官と候補者の対話の中で互いに質問が交わされる状態が良いでしょう。

クロージング

面接の最後には、クロージングが必要です。候補者の意向を確認し、並行して他社の応募や選考状況も確認すると良いでしょう。面接の次のステップや連絡方法と連絡時期について説明し、候補者に感謝を表して面接を終了させます。

 

候補者の見極め方

候補者を見極める工程の大半は「候補者の本質を知る」事にはじまります。面接では限られた短い時間の中で、候補者の数年~数十年を知る事を求められます。限られた時間の中で、要点に絞って情報を集めるスキルが求められる為、まずは、理解しやすいよう「過去、現在、未来」に順序を整理して、その人の経験、スキル、個性を当てはめて理解していきます。

履歴書や職務経歴書は主に「過去」の出来事であり、これまで歩んできたキャリアです。

面接の場は「現在」の候補者が、これから転職をして何かを変えたい、叶えたい為に行動、思考している状態です。そして「未来」については、候補者がこの転職で「過去の職歴や経験を活かしたい」、「過去に経験した失敗を繰り返したくない」、更には「成し遂げたい目標がある」方が多くいます。面接官の見極めにはこれらの本質を理解する事が重要となります。

また、候補者の本質を理解し、その性格や価値観がクリニックの組織文化に適合するかどうかイメージをします。「※2行動面接」や「※4状況面接」の技法を用いることが有効です。

「まとめ」
・過去 現在 未来に整理して理解する
・スキル、能力、経験を理解する
・医院側の条件、待遇、組織文化とマッチするか
・入職意欲はあるか、何にモチベーションを感じるのか
・入職をして何か叶えたいのか、医院に対して何をもたらしたいのか
・定着する為の要因は何か
・ストレス負荷を感じやすい事はなにか

 

面接官のNG行動・NG質問

採用面接においては、クリニックまたは面接官の立場が上で、候補者が下であるという構造の認識は全く誤解です。面接ではどちらが上・下という関係ではなく、面接官はあくまでも候補者と対等な視点に立ち面接業務を行う立場にあるだけの立場であることを自覚する必要があります。候補者に対して横柄な態度で接してしまうと、候補者がクリニックに対して抱くイメージが悪くなり、今後のクリニックへの悪評が広まり患者さんへの悪評へと繋がります。

 

NG行動・質問の例

①基本的人権や就職差別につながる可能性のある質問

本人に責任のない事項の把握

– 本籍、出生地
– 家族に関すること(職業、続柄、病歴、地位、学歴、収入、資産など)
– 住宅状況(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
– 生活環境、家庭環境

本来自由であるべき事項(思想信条に関連)

– 宗教
– 支持政党
– 人生観、生活信条
– 尊敬する人物
– 思想
– 労働組合、学生運動、社会運動
– 購読新聞、雑誌、愛読書

②候補者が身体や家族の差別につながる質問

– 過去の病気や手術歴、現在通院の疾患に関して詳細に質問する

– 学歴・職歴をおとしめる質問、家族に関する質問など、能力とは関係のない質問

③「政治・宗教・スポーツ」に関する話題(通称「3S」)

– 候補者の思想・信条が反映されやすく、個人間の対立を招く恐れがあるため、面接時のタブーとされている。

④高圧的な言動、不快に感じる言動・質問

– 圧迫面接、威圧的・悪意のある質問

– テーブルをたたく、ドアを強く開け閉めするなどの身体的な動作・行為

– 椅子に浅く腰掛けたまま肘をつき、足を組むなどの不適切な態度

 

※1 アイスブレイクとは

アイスブレイクとは、面接の初めに行われる小さな雑談や世間話で、緊張を和らげることを目的としています。この段階では、候補者がリラックスして自分らしさを表現できるような環境を作り出すことが重要です。アイスブレイクは、天気や交通状況などの日常的な話題から始めることが一般的です。この軽い会話を通じて、面接官と候補者の間の緊張を緩和し、より自然な対話の流れを作り出します。アイスブレイクは、面接の成功に向けて、両者がリラックスした状態でコミュニケーションを取り始めるための効果的な手法です。

※2 行動面接とは

行動面接は、候補者の過去の行動や経験に基づいて、その人の能力や適性を予測する面接技法です。「過去の行動が未来の行動を最もよく予測する」という考えに基づいています。この面接形式では、具体的な状況や課題、行動、結果に関する質問がなされます。例えば、「困難なプロジェクトをどのように管理したか」や「チーム内の対立をどのように解決したか」などの質問が含まれます。候補者は実際の経験に基づいて答える必要があり、これにより面接官は候補者の問題解決能力、チームワーク、リーダーシップなどの具体的な能力を評価することができます。行動面接は、候補者の潜在的なパフォーマンスをより正確に把握するのに役立ちます。

※3 キャリアパスとは

キャリアパスとは、簡単に言えば仕事を通してどのような経験を積み、どう成長していきたいかといった、キャリアを積んでいく道のりを指します。この道のりの過程で、昇進、他部署異動、時には全く違う科目への転職や職務を経験するなど、仕事に関する変化や成長、そこで何を感じて、どんなスキルを身に着けたか、関心、価値観、目標などが含まれています。

※4 状況面接とは

面接中に候補者に仮定の状況や実際に起こり得る問題を提示し、その場でどのように対処するかを尋ねる面接方法です。この技法の目的は、候補者の思考過程、問題解決能力、意思決定のスキル、そしてその人が実際の職務環境でどのように行動するかを評価することにあります。

状況面接では、通常、具体的で現実的な職務関連のシナリオが提示されます。例えば、「もし重要なプロジェクトの締め切りが迫っていて、同時にチームメンバーが病気で休んだ場合、どう対応しますか?」というような質問がなされることがあります。このような質問により、面接官は候補者の臨機応変な対応能力、プレッシャー下での働き方、チームワーク、リーダーシップなどを見ることができます。

株式会社ジムチョー®